2030年/長野/デジタルスナック
こんばんはー。長野の場末のスナックに外国人の4人組がやってきた。
時は2030年。
そのスナックは日本のレトロなガジェットが楽しめるデジタルスナックだった。
2017年からIT起業家達からはじまったスナックブームはもはや世界的なブームとなっていた。
カラオケ、スナック、寿司。
今や、日本はスナックを海外に輸出するようになっていた。
ことの発端はSNS疲れだった。
そんな中、デジタルスナックというコンセプトが広まっていった。
スナックはサロンであり、新たなコミュニティの場だった。
2017年くらいにはじまったTinderのUIが世界を席巻していた。
2030年の若者たちは、TinderUIで右と左でswipeするだけで、自分が今夜飲みたい相手や、たまたま近くに旅行に来ていた外国人と一緒に飲めると一緒に来ていた。
今日、会いたい起業家のコミュニティ、日本好き外国人のコミュティ、どんなコミュニティでも昼間にswipeするだけで、自分が最も飲みたい相手とのセッティングを一瞬でしてくれた。
すごい。
そのベトナム人の女の子が声を上げた。
なにが。
ベネズエラ人の20歳の女の子が応えた。彼女は、ベネズエラが崩壊したときにBitcoinの口座開設を代行していた小学生だった。彼女はいち早く、ベネズエラ人たちのために口座を開設し、国内でも名だたる富裕層となった。
Garapagos Phoneよ。
Faxもある。これがあの有名なFaxだよ。
インド人の男性がこたえた。
彼は根っからの日本フリークだ。
レーザーディスクをセットして、Arグラスで全員が歌い出す。
2023年にArグラスの自動翻訳機能ができてから、世界中のみんながどんな国のどんな音楽でも歌えるようになった。
インドの彼が好きなのはJ-POPだ。
と言いながら、彼が歌い出す。
カラオケはどんな歌詞でもすべて自国語に翻訳し、歌うことができる。
ベトナムの女の子が指をさす。
ここには、なんでもあるのね。
日本人の女の子が接客する。
ベトナムの女の子が話す。
日本はいいわね。コスパが最高よ。
2025年に日本は国内工場が復活した。東南アジアの給与が逆転し、日本には工場がどんどんできていた。ベトナム、インド、マレーシア。日本人の安い給料はもはや失われた30年と呼ばれていた。
2018年には、スナックで若いベトナム人やフィリピン人の女の子たちが一生懸命はたらいていた。彼女たちはもはやいない。
日本人の女の子ばかりだ。
そして、東南アジアの女の子たちが遊びにくる。
日本のスナックに来たかったのよ。
そうだよな、自分たちの国のデジタルスナックしか経験したことしかなかったもんな、俺たち。
男の子二人がArグラスを外す。
彼らたちは、一切、言葉が通じないという場をあえて楽しむ。
日本人の女の子とボディランゲージできゃっきゃと楽しんでいる。
言葉が通じないって面白いよな。
日本でしかこういうの味わえないよな。
今や、世界中では防犯カメラとデジタルID制度で、もはや監視されず楽しめる場はなくなっていた。
ここでは、王様の悪口や政府の批判も自由だった。
日本はマイナンバー制度に失敗し、もはや、世界中で監視されずに飲める国は日本を始め、少数となっていた。
4人は柿ピーやshochu、sakeを散々飲み、日本の夜を楽しんだ。
そろそろ、出ようか。
インド人の彼が妙齢のママに声をかける。
このお店はcryptoドルは使えるのか
使えません。
なんだと、cryptoルーブルは使えるのか
使えません。
あなた、知らないの。
ベネズエラ人の女の子が話す
このお店は現金しか使えないのよ。
そんな情報は聞いてないぞ。
Wikipediaにも載ってなかったぞ。
馬鹿ね。WEOよ。
Wikipedia Optimazitionが世界中で流行っていた。
まさか、このお店はキャッシュしか使えないというのか。
現金なんて見たことないぞ、どうすれば手に入れることができるのだ。
その時、隅で飲んでいたしょぼけた日本人の老人が声をかける。
だんな、現金を売りますよ。
日本円、20,000円、どうですか。
いくらだ。
200,000円でどうですか。CryptoドルでもCryptルーブルでも払えますよ。
そんな、ぼったくりじゃないか。
なんで現金を買うのに10倍もはらわなければいけないのだ。
だんな、リサーチが足りませんな。
インド人はなくなく払う。
4人が帰ったあと、老人はプロジェクターのスイッチを切る。
ここは、ただの会議室だ。
プロジェクションマッピングでスナックを演出し、外国人からぼったくるお店だ。
今日も儲かったわね。
ママがつぶやく。
老人が舌なめずりする。
今日もいい酒がのめたわ。