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いま、リアルタイム・ウェブを改めて考える

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リアルタイム・ウェブという言葉は、今、ほとんど耳にしなくなった。
 

基本的にはSNSと関連した文脈で用いられる概念であり、典型的にはTwitterFacebookがその代表例として挙げられる。

TwitterFacebookの成功例や、Google2009年10月から順次それらを検索結果に反映したリアルタイム検索を実施し[1]、各種のSNSがそれに進んで対応したり[2]、更には2010年2月からTwitter類似サービスであるGoogle Buzzの提供を開始するなど、2009年末から2010年初頭にかけて、急速にインターネット産業の1つの大きな潮流になり始めている。

 
Wikipediaで調べてみると、2010年頃に出てきたキーワードで、ちょうど、TwitterFacebookなどのSNSが広まってきた頃である。いわゆる「リアルタイム検索」などがまだ物珍しかった時代である。検索といえば、だれかが書いたブログの記事を2、3日後にGoogleがインデックスして初めて検索エンジンの結果に引っかかるというのが常識だった時代にTwitterの書き込みが瞬時に検索に引っかかることはそれ自体が画期的だった。
 
かつての文脈の中で語られたリアルタイム・ウェブというのはむしろ現在では当たり前になってしまい、わざわざ口にするまでもなく、リアルタイム性が担保されている。
 
ここで取り上げたいのは、むしろ、新たな時代の「リアルタイム・ウェブ」である。
 IoTがもてはやされる時代のリアルタイム・ウェブについて考えてみたい。
究極のリアルタイム・ウェブ、それは、ほぼ遅延がないリアルタイムのウェブ、もしくは遅延やタイムラグがあったとしても数秒以内に収まるようなウェブである。
 
この新たなリアルタイム・ウェブについて考えるようになったのは、「Uber」のアプリを初めて使った時だった。
Uber」のアプリは単純に言ってしまえば、「スマートフォンでタクシーを呼んで」「スマートフォンで料金を払う」仕組みに過ぎない。細かいことをいえば、運転手がプロのタクシードライバーでないとか、評価システムがあるとか、相乗りすると料金が下がる仕組みがあるとか色々な工夫があるが、ユーザーからすると、最も重要なことは、「タクシーがいつ来るか」「ぼったくられないか」の2点であろう。
 
その点でUberのアプリが優れているのは、そのインターフェイスである。
アプリを開くと、近隣の地図が表示され、近隣に停車している、あるいは、近隣を走っている車がミニカーのようにアイコンとして表示される。その車のアイコンをクリックすると、運転手の情報が表示され、オファーを出すことができる。オファーをすると、その車から、現在、自分がいる場所までの到着予想時間が表示され、ミニカーが動き出して、自分のいる場所まで移動し始める。
 
 
ユーザーとしては、車の動きが可視化されているので非常に安心感がある。
この「安心感」こそがUberの優れたところである。
例えば、スマートフォンで電話してもタクシーの配車は頼むことができる。
ただし、いま、どこを走っていて何分後に来るかは一切わからない。
とても不安なのである。
 
Uberにおける「リアルタイム・ウェブ」とは、車の現在地が可視化されて、移動の状態がすべて見えるところである。
 
別のリアルタイム・ウェブについて挙げてみよう。
現在、アジア各国で、ライブストリーミングアプリが流行してきている。
特に中国、台湾、韓国、日本。
日本では、DeNA社のSHOWROOMやLINE社のLINE LIVEが有名である。
ライブストリーミングは一種のクラウドファンディングに近い投げ銭システムと融合し、また、コマース分野にも手を伸ばし、インターネットアイドルたちが展開する独自のカルチャーを生み出している。
 
 
SHOWROOMアプリなどが顕著だが、面白いのは他のユーザーがコメントを発したり、投げ銭を投げ入れたりする様子がリアルタイムで見られることである。元々は、ニコニコ動画が原型になっているであろう、このシステムは、より臨場感を出すための仕組みとして有効に機能している。周りのユーザーのアクションを他のユーザーにも見せることにより、一種のお祭り感が演出でき、参加者もライブ感、一体感、高揚感が味わえる。
 
SHOWROOMにおける「リアルタイム・ウェブ」とは、他のユーザーのアクションが可視化されて、一種のお祭り感が楽しめることである。
 
さらに、別のリアルタイム・ウェブについて考えてみよう。
 
企業経営の分野では、BI(Business Inteligence)ツールが流行っている。
これも一種のリアルタイム・ウェブである。しかしながら、本当にリアルタイムかというとそうでもないこと多いだろう。本当にリアルタイム性を担保するためには、クラウド上ですべてのデータをリアルタイムに管理する必要があり、一部のIT企業を除けば、まだまだ基幹システムをすべてクラウドで構築という企業は少ないのが現実であろう。
しかし、いずれ、すべてのデータをクラウド上で管理するようになれば、企業経営をリアルタイムで可視化するリアルタイム・ウェブが実現されることになる。
 
BIツールにおける「リアルタイム・ウェブ」とは、企業経営の重要な指標がリアルタイムにビジュアライゼーションされ、グラフなどで表示されることである。
 
BIツールではないが、カルペルスキーのサイバー攻撃MAPなどは見ているだけでも楽しくまったく飽きない。

cybermap.kaspersky.com

 
これも優れた「リアルタイム・ウェブ」の一種だろう。
 
こういったように、ところどころで芽のようなものが息吹いてきているリアルタイム・ウェブだが、まだまだリアルタイム情報が開示されることで面白くなったり、便利になったりすることはまだまだあるのではないだろうか。
 
例えば、まず、満席/空席情報である。
電車、ホテル、タクシー、飲食店、イベントスペース、映画館、こういったものの満席/空席情報は可視化されていない。業務システムでは予約システムなどが利用されていて従業員には可視化されているケースもあるかもしれないが、一般ユーザーにはまだまだ表示されていないことも多い。特にリアルタイムに状況が確認できるような仕組みがあるかといえば疑問である。
 
次に、駐車場の空き情報やトラックの積載物の情報、物流に絡む物品や輸送車の移動情報も可視化されていない。
これは、最終的にはRFIDタグなどの利用が必要かもしれないが、宅配会社に宅配物の移送状況を問い合わせたことのある人は多いだろう。すべて、リアルタイムに可視化してユーザーにOPENにすれば良いのだ。そうすれば、ユーザーとしても、いちいち、問い合わせをする必要がなくなる。宅配会社では、荷物の再配達が問題になっているようだが、宅配スタッフのプロフィールと顔写真といま現在の場所をリアルタイムにLINE上に表示でもすれば、ユーザの方が勝手に希望の宅配時間をチャットで送ってくれるだろう。このスマホ全盛期に、宅配会社のスタッフ側から、ユーザーに電話で家にいるかどうか確認したり、届けてから不在を知るというような方法は非効率的であり、ナンセンスである。そんなことをして送料を値上げするくらいなら、ユーザー側から再配達にならないような配達の方法を入力させる仕組みの方がよっぽどよい。
 
SHOWROOMのような、インターネット上での一体感というテーマではまだまだ面白いサービスや取り組みができるであろう。もともと、インターネット自体が得意とするのは、非同期型コミュニケーションである。例えば、掲示板への書き込みに対して、数時間後や数日後に別のひとがコメントするといったような時間や空間が異なる相手ともコミュニケーションが取れるというのがインターネットの良いところである。しかしながら、ソーシャルゲームでのユーザ同士のコミュニケーションのようにリアルタイムにコミュニティが形成されることによる面白さもまだまだ追求できるのではないだろうか。
 
例えば、インターネット上でのリアルタイムの会議や討論会、バーチャルな出会いパーティや飲み会、教育サービスなどの可能性もあるだろう。
 
おそらく、今後、前述のRFIDタグの普及、VR/ARデバイスの普及、センサーテクノロジーや、AIによる認識技術の普及により、現在のリアルタイムな状況をWeb上で閲覧できる。または、VR/AR上でバーチャルに体験できるというWebサービスは次々に出てくるだろう。
 

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いま利用しているWebサービスで、何が、リアルタイム化されていないか?
 
こう考えると新たなWebサービスを考える上でのヒントになるかもしれない。
時代は新たなリアルタイム・ウェブの出現を希求しているのだ。