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中国は名実ともに世界最高・最先端のIT国家になりつつある

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一部のビジネスマンを除くと、まだまだ多くの日本人にとってITビジネスといえばアメリカのシリコンバレーであり、シリコンバレーが世界で最も進んだITビジネスが行われるエリアであるというイメージを持っている人がほとんどだろう。
 
だが、実際には、現在、世界最先端のITのビジネスモデルを作り出しているのは中国であり、facebookにしろ、LINEにしろ、wechatやアリババの後追いをしているにすぎなくなりつつある。
 
 
 
 
WeChatアプリはアプリ内アプリとしてサードパーティにビジネスを解放し、独自の生態系を作り上げている。これは、FacebookもLINEもできていないことだ。
 
 
そして、Amazonに似たその設計思想をメッセンジャーアプリという現在、最も人々に受け入れられているインターフェイス上で実現している。これから、その仕組み上でChatbotが動き、音声認識が動くだろう。そして、Chatbot同士の連携も世界で最も早く進む国になろうだろう。
 
ALIPAY”芝麻信用"のすごいところは、中国の文化をテクノロジーで変えつつあるところだ。
 
 
中国は元々、内戦ばかりやってきた国である。春秋戦国、三国志の時代から、多民族が戦争を繰り返してきた。この国では、戦争をして奪った者が勝ち、強盗して逃げた人間が得をしてきた国である。そのため、まず相手を疑うところからすべての商習慣が始まる。五人組制度で互いの不正を監視し、不正をすると村八分にあい、狭い国家で悪いことをしても、必ずどこかで噂が広まり、結局つかまってしまう島国の日本とはまったく異なり、隣国に逃げれば逃げ切れる地理的状況が中国文化を作ってきた。日本では性善説で商売が始まり、中国では性悪説で商売が始まる。
 
日本人はよく、中国人や韓国人は嘘つきだと文句をいうが、嘘をつかないと生きていけない歴史が人々の習慣や行動を作ってきた。
 
ところが、現在の中国IT企業が行っているのは、テクノロジーを利用した完全監視システムの構築である。このまま、進めば、中国が世界で一番犯罪者が少ない国になるかもしれないというイメージさえ持たせるような不正ができないアーキテクチャを作りつつあるのだ。
 
日本人からすると、GmailFacebookも使えない中国は民主化を受け入れず、閉鎖的な社会主義国家と映るだろうが、国家政策としては中国が行っている政策の方が正しい。
 
Googleにしろ、Facebookにしろ、ビッグデータを扱うIT企業というのはその国の軍事組織がバックについてる。韓国ならNAVERである。軍事技術の民営化をルーツに持ち、生まれた産業というだけでなく、国の軍事的意向に従い、利用されるツールである。アラブの春Facebookを利用して国家を転覆させたアメリカの軍事戦略であり、決して独裁国家で虐げられた若者が自発的にSNSでコミュニティを作りながら民主化を求めたというような美しい現象ではない。
 
中国はアメリカにそのようなことは絶対にさせない。
 
日本が残念なのは、そのような国家を代表するIT企業の創生に失敗したどころか、そういった軍事とITの関係性さえ理解せずITツールを使っている人たちが大半だという状況を招いていることだ。これは教育の問題であり、GHQの愚民化政策が現在まで続いていること以外の何者でもない。
 
日本も世界を代表するITインフラを生み出す可能性はあった。
TRONという国産OSがWindowsに変わって世界を席巻している可能性があった。
しかし、日航機事件で技術者たちが抹殺され、日本がITビジネスで世界を代表する企業を生み出す可能性は閉ざされてしまった。
 
おそらく、製造業で日本に勝てないことを理解したアメリカが次の国家政策としてITビジネスを選択した時に、日本に巨大IT企業が生まれる芽は徹底的に摘まれたのだろう。(※日本でもLINEががんばっているじゃないかと思う人もいるかもしれないが、残念ながらLINEのバックはサムソンであり、韓国の軍事産業である)
 
ウォーラステインが述べているように、覇権国家というのは、オランダ→イギリス→アメリカと移動してきた。
世界システム内において、ある中心国家が生産・流通・金融の全てにおいて他の中心国家を圧倒している場合、その国家は「ヘゲモニー国家覇権国家)」と呼ばれる。ウォーラステインによれば、ヘゲモニーオランダイギリスアメリカの順で推移したとされる。ただし、ヘゲモニーは常にどの国家が握っているというものではなく、上記三国の場合、オランダは17世紀中葉、イギリスは19世紀中葉、そしてアメリカは第二次世界大戦後からヴェトナム戦争までの時期にヘゲモニーを握っていたとされる。この内、イギリス・アメリカに関してはヘゲモニー国家であったことにほぼ異論はないが、しばしばオランダに関し、その優位はヘゲモニーと呼べる程には至らなかったとも考えられている。
 

世界システム論 - Wikipedia

 

面白いのは覇権国家が西へ西へと移動していることである。アメリカの西といえば日本、つまり日本は世界の覇権国家になる可能性を持っていたが、おそらく、日本を飛ばして中国が次の覇権国家となるだろう。
 
リーダーシップを取るのが苦手な日本人の国民性か、アメリカが最も恐れている日本の軍事力を育てないためのアメリカの占領政策かはわからないが、日本は覇権国家にならないという選択肢を取った。それどころか、東電にしろ、郵政にしろ、日本のインフラビジネスは民営化という名の下に解体されていく運命にある。おそらく次はアメリカの国家戦略のもとにNTTが解体されるであろう。
 
ITに関して言えば、日本もアメリカもレガシーシステム既得権益が大きすぎてもはや中国のようなドラスティックなITの進化を望むのは難しいだろう。そして、日本と同じような高度経済成長と世界の工場としての製造業の中心地となった中国はソフトウェアの分野でも世界の最先端をいき、IoT時代の覇権を握るだろう。
 
自動車産業のディスラプトが始まろうとしている今、日本の弱体化を防ぐ国家戦略を中国から学ばないと、日本は覇権国家になることができないまま、没落国家になるしかなくなるだろう。

※世界最先端のIT国家はエストニアであるという説もあり、それはそれで、まさにその通りなのだが、今回は、経済規模と影響力という観点から中国を取り上げた。エストニアの独自性についてはまた別の機会に取り上げたい。